過去のシェルシナリオ(アーカイブ)

2020年のシェルシナリオ50周年を記念して、シェルシナリオのアーカイブ「Earlier Scenarios」がシェルシナリオチームの公式ウェブサイトに公開された。

Earlier Scenarios

(出所:Royal Dutch Shell Scenarios Team)

https://www.shell.com/energy-and-innovation/the-energy-future/scenarios/new-lenses-on-the-future/earlier-scenarios.html

シェルシナリオの歴史は1970年前後に遡る。シェルシナリオ活動が始まって以降、シナリオは社内でのみ活用されており非公開だった。

そんなシェルがシナリオを初めて公開したのが、「Global Scenarios 1992-2020」。このシナリオ作品は、"New Frontier"、"Barricades"という二つのシナリオから構成されている。それ以降の公開シナリオ(グローバルシナリオ、エネルギーシナリオ)が上記アーカイブで閲覧できる。

そして、このアーカイブの中でとりわけ有用なのは、シナリオプランナーを目指す人に役立つテキスト「Scenarios: An Explorer’s Guide」である。2008年に出されたこのガイドブックは、シェルシナリオの理論と実践について簡易にまとめられた良質なテキストとなっている。

 (出所:Shell, An Explorer’s Guide, 2008)

余談①:シェルがシナリオを初公開した1993年にシェルシナリオチームのリーダーを務めていたのは、米国人Joeseph Jaworski(ジョセフ・ジャウォースキー)。シェル生え抜きの人物ではなく、シェルから招かれ、シナリオチームのリーダーとなった。記録によると在任期間は1992 - 1993年の2年間。ジョセフ・ジャウォースキーは、「シンクロニシティ」という自伝を書いており、シナリオチーム参加の顛末からGlobal Scenarios 1992 - 2020の作成と公開に至るまでが記述されている。

私が「シンクロニシティ」という書籍を知ったのは、シェルシナリオチームに勤務していた頃だった。当時、在日オランダ大使館から、日本の中小企業経営者の欧州視察ツアーにてロンドンシェルセンターを訪問したい、というリクエストがハーグのシェル本社にあり、シェルセンターで働いている唯一の日本人だろう、ということで私にお鉢が回ってきた。総勢20名ほどの日本の中小企業経営者の方々の前でシェルシナリオについて説明をしたり、シェルセンターのご案内をした。その後、帰国された参加一名の方から、とてもご丁寧な御礼のメールを頂いた。その方は、その方の尊敬されている方から「シンクロニシティ」という本を紹介されてお読みになられシェルシナリオに感動されていた、そのシェルシナリオについて実際にお話を聞けて良かった、とのことだった。そのメールで知った「シンクロニシティ」、ジョセフ・ジャウォースキーという人物の生き方が良くわかる名著となっている。

シンクロニシティ[増補改訂版] ― 未来をつくるリーダーシップ | ジョセフ・ジャウォースキー, 金井壽宏, 野津智子 | ビジネス・経済 | Kindleストア | Amazon

余談②:2013年に公開された「New Lens Scenarios」は、日本語版を今でもEarlier Scenariosより閲覧できる。この日本語版作成には、当時のシェルジャパン、昭和シェル石油という二つの日系シェルグループ企業が関わった。私は当時、昭和シェル石油に勤務をしており、角和先生のシナリオ研修参加者の中の有志として、翻訳に携わった。「New Lens Scenarios」は英語版を読むと分かるように、あまり平易な英語で関われているとは言えず、また読み手が政治や経済に関するバックグラウンドを持っていることを前提にした書きぶりも随所にあり、その翻訳は当時素人の私たちには簡単ではなかった。流れとしてはシェルジャパンが依頼してプロの翻訳家に和訳してもらったものをベースに、角和先生指導の下、角和塾卒業生の私たちが「シナリオのスピリット」を吹き込むというもの。そんなことをシェルシナリオチームが考えるわけないだろう!という角和先生の厳しい指摘も受けつつ、何とか和訳を仕上げた。これをロンドンシェルセンターのPR部隊にもっていって、デザインを直してPDF版を出版社につくってもらう、というのが、私のシェルシナリオチームでの一番最初の仕事だった。

japanese-new-lens-scenario-brochure.pdf (shell.com)